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​東京国立博物館 参与
​文化批評家 文化産業科学者 阪田 徹 Ph.D.

​​ 阪田 徹 Ph.D.が東京国立博物館 参与に就任

 2024年、阪田徹Ph.D.が東京国立博物館 参与に就任した。

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1.博物館とは​
 

 博物館という概念は、古代ギリシアに遡るムセイオン(Μουσείον)に起源を持つ。ムセイオンは「ミューズの聖地」として、学術研究と文化交流の拠点であった。この原初的な形態は、後のヨーロッパ・ルネサンス期や大航海時代におけるコレクション熱へと発展し、現代における公共性と専門性の両立を目指す博物館の基礎を築いた。

 一方、日本においては、正倉院をはじめとする古来より伝統的な収蔵庫の存在が、博物館的機能の先駆けとして評価されている。両者は、設立当初の目的や社会背景、さらには求められる役割において大きな違いがあるが、いずれも文化の保存と伝承、そして市民教育という共通の使命を担っている。

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​​2. 世界と日本の博物館の特徴と求められる役割の比較

 世界の博物館は、初期のムセイオンに見られるように、学問と芸術の総合研究所としての機能を有していた。権威や富の象徴としての側面が強調され、収集された品々は、政治的権力や文化的優越性を示すためのものであった。その後、絶対王政の崩壊と市民革命に伴い、博物館は公共性を帯び、一般市民への教育普及や文化資産の保存という社会的役割が顕在化した 。

 一方、日本の博物館は、正倉院に代表されるように、長い歴史の中で培われた文化財保存の知恵に基づいている。日本の気候条件により、文化財は非常に繊細であり、保存と同時に活用するための独自の技術や方法が発展してきた。さらに、江戸時代の出開帳や会所展示により、一般市民への文化普及が試みられたことは、明治以降の近代博物館整備の基盤となり、国民教育や国家形成のための重要な役割を担うに至った。

 また、世界の博物館は専門性の高いコレクションの展示や、学術研究機能の充実が図られているのに対し、日本の博物館は、地域文化の振興や、伝統工芸、武具、仏像など、歴史的背景に根ざした独自の収蔵品を中心に展示している。これにより、単なる芸術作品としての側面のみならず、歴史的・社会的文脈の中での文化継承が強調される。さらに、現代においては、国際交流の促進や、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献など、多様な社会的役割が求められている。

 このように、世界と日本の博物館は、その成立過程や社会背景、さらには収蔵品の性質や展示方法において明確な違いを示す。世界は、学術研究と権威の象徴としての側面を経て公共性を獲得したのに対し、日本は、伝統の保存と同時に、地域振興や国民教育といった側面を重視する独自の発展路線を歩んできたのである。

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​​3. 東京国立博物館の役割

 東京国立博物館は、日本の歴史・芸術・工芸の粋を集積した国内最古かつ最大級の博物館である。

 

 日本独自の文化や美意識を体現する貴重な展示品を通して、過去から現代に至る文化の連続性と変遷を伝えるとともに、国際社会との文化交流の窓口としても重要な役割を担っている。

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